東京スカイツリー内部にある直径10mの空洞では、完成したら最上部となるアンテナ用「ゲイン塔」の組み立てが着々と進んでいることをご存じでしょうか。
ゲイン塔の建設は、地上レベルで全長を組み立てた後、600m以上引き上げて最上部に設置する「リフトアップ工法」で行われます。
なぜリフトアップ工法を採用したのかについては、「未知の高さを解決する切り札:ゲイン塔のリフトアップ工法」で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
そして、地上レベルでの組み立ては、先端部から造り始め、できた部分をワイヤーで引上げながら、その下に鉄骨を継ぎ足していくという「だるま落し」と逆の要領で進めています。
この組み立て手順は、「流れ作業でさながらミニ工場:空洞部でのゲイン塔鉄骨組み立て」で詳しく説明していますので、こちらもご覧になってみてください。
というわけで、皆さんが見上げているタワーの内部には、実はすでに長さ100mを超えるゲイン塔ができあがっています。タワーの中にもう1本タワーがあるって感じです。
ゲイン塔の組み立てにおけるポイントは、鉄骨の搬入エリアから空洞内までが、工場の製造ラインのようになっていることです。東京スカイツリー内の、さながら「ミニ工場」ともいえます。
この写真は、上図4番の辺りから7番の方向を撮ったものです。台車のレールの先にあるのがタワー内の空洞で、上のほうにゲイン塔の最下部が少し見えています。お分かりになるでしょうか。
こちらは、流れ作業の「塗装」の様子。上図でいうと11番ですね。ゲイン塔内に仮設足場の床を設けて、地上50m付近で塗装を進めているところです。
ちなみに、鉄骨の現場溶接部は工場で塗装を仕上げておくことができません。赤く見える部分は、現場で溶接が終わった部分に下塗りをしたところです。5層のコーティングによって仕上げていきます。
このように、タワーの塔体が伸びていく一方で、ゲイン塔工事も空洞内で並行して進んでいます。
リフトアップ工法によって、高さ500mを超える高所作業も少なくなりますし、未知の高さでの気象条件に左右されずに溶接や塗装ができます。大林組にとっては、設計された建物を「いかにして造るか」ということが腕の見せどころなんですね。
なお、ゲイン塔は今年末には495m付近から頭を出し始める予定です。これからも、ブログで「施工の知恵」をいろいろと紹介していきたいと思います。