今日は、塔体内部でゲイン塔の位置を安定させている油圧ジャッキについてご紹介しましょう。
ゲイン塔は6本の鉄骨柱からなり、直径15.2mmのワイヤー(直径5mmのピアノ線材を7本より合わせたもの)348本によって、塔体内部の空洞に吊られています。
(参考:ゲイン塔のリフトアップ工法)
塔体内部では、このように油圧ジャッキで鉄骨柱の外側をガッチリと押さえ込むことで、所定の位置に真っ直ぐに固定されています。リフトアップ中も、油圧ジャッキが押さえている面を、ゲイン塔の鉄骨柱が滑り上がっていきます。
柱鉄骨ごとにわずかな誤差があるため、油圧ジャッキの圧力を監視し、押し出し長さをミリ単位で調整しながら、慎重にゲイン塔の垂直度を保っています。
ちなみに、ゲイン塔の鉄骨柱には溶接の継ぎ目(溶接ビード)があります。1cmほど盛り上がっているため、リフトアップの際に、ジャッキが押さえている面を滑り上がることができません。
そこで、ジャッキの押し出し長さを引っ込め、溶接ビードをやり過ごします。ただし、このときにジャッキが鉄骨から離れてはいけないので、ジャッキを上下2段に配置し、どちらかが必ず鉄骨柱を押さえ込めるようになっているのです。
このように、長さ240m(下部の階段を含む)、重さ約3,000トンにも及ぶゲイン塔を垂直に所定の位置に保つため、ミリ単位の万全な精度管理で作業が進められています。
さて、高さ634mまで残り40mとなりました。
広州テレビタワー(600m)を超え、自立式電波塔として世界一の高さになる日はもうすぐです。
2月3日に、東京・千住にある海外技術者研修協会(AOTS)の東京研修センターで、フィリピンからの研修生を対象に、東京スカイツリー建設に関する講義を行いました。開発途上国への技術協力の一環で開催されたものです。
プロジェクト・マネジメントを学ぶためにフィリピンから来日した10名の皆さんは、建設や通信、製造などさまざまな業界で働き、自国ではリーダーとして活躍する方ばかりです。
今回講師となった大林組の社員は、東京スカイツリーの建設技術を英語で説明し、「風の揺れは工程にどの程度影響するのか」、「鉄骨はどこから運搬してくるのか」など多くの質問にも答えました。
緻密な計画と工夫の数々に、研修生は感嘆の声を上げ、深くうなずきながら熱心に聞き入っていました。
講義後は、業平橋駅近くの東京スカイツリーインフォプラザで説明を受け、インフォプラザの屋上から建設中の東京スカイツリーを見学しました。
世界に誇れる建設技術を紹介し、研修生の皆さんにも満足していただけたようです。建設を通じて世界の人々とつながったことに、喜びを実感した一日でした。