完成したら最上部となるアンテナ用鉄塔「ゲイン塔」は、タワー内部の空洞(地上部)で組み立て、できた部分をワイヤーで引き上げながら、その下に鉄骨を継ぎ足していく方法で構築を進めてきました。
今年6月頃に先端部付近から造り始め、このたび、地上で組み立てる部分の建て方を終えました。
ゲイン塔工事は、以前に「ゲイン塔工事は腕の見せどころ」でもご紹介したとおり、「だるま落とし」と逆の要領で組み立てたり、ミニ工場のように流れ作業で仕上げていったりと、さまざまな知恵が随所に散りばめられています。
これは、ゲイン塔鉄骨をタワー空洞へと引き込んでいるところです。
ちなみに、ゲイン塔の下の方の鉄骨(写真)は、全体をリフトアップしたときに外塔鉄骨と接続する部分になるので、ゲイン塔自体の断面が太くなっています。そのため、ゲイン塔の根元部分を構成する6本の鉄骨は、それぞれ外側に「くの字」に曲がっています。
写真ではちょっと分かりづらいのですが…
この鉄骨はサイズ等の関係で台車に斜めに載せ、空洞部の間口へ引き込んでいることが特徴です。
ダイナミックに見える工事も、事前に三次元CADによるシミュレーションで計画を立て、現地で実測してから始め、ミリ単位の精度管理で進めています。重さ約30トンもの巨大な鉄骨が、寸分の狂いもなく取り付けられていく様子は、まさに圧巻です。
現在、ゲイン塔は最上部付近を「吊り点」としてワイヤーで吊っています。今後はゲイン塔をいったん地上部へ下ろし、「吊り点」を最下部の付近へと付け替える作業があります。
これはゲイン塔を最上部へ引き上げる「リフトアップ工法」に備えるもので、人の動作に例えれば「いったん荷物を床に置いて、下の方を持ちなおす」、そんな感じでしょうか。
伸びゆくタワーの成長ぶりも楽しみですが、工夫を凝らして造るゲイン塔には「建設の醍醐味」が詰まっていて、こちらも負けじと魅力的です。
ゲイン塔の下に階段を継ぎ足す作業などが残っているので、ゲイン塔がタワーの頂部(495m付近)から顔を出し始めるには、もう少し時間がかかります。外から見えないタワー中心部ではまだまだ工事が続きますので、今後もゲイン塔にぜひご注目ください。
東京スカイツリーには、塔の中央に「シャフト」という部分があります。工事が進むと外装パネルで覆われ、外塔鉄骨にも囲まれていくので、完成後に外から見えることはありませんが、エレベーターや設備配線・配管などが入る重要な躯体となります。
そのシャフトの工事では、地上で鉄骨をブロック化してから効率よく揚重する工法を採用しています。あらかじめ、壁ALC版や設備配管、仮設階段なども取り付けてしまうので、作業効率のアップはもちろん、安全性の向上も実現できるというわけです。
鉄骨ブロックを揚重している様子。地上での一体化で、揚重回数の削減にも貢献しています。
最上部にブロックを据え付けていきます。(その後、ブロック同士を梁やブレースでつなぎます)
施工手順や工夫は「効率よく建てるために:シャフト鉄骨一体ブロック化」で紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
ちなみに、鉄骨の建て方は、精度確保のため中心から外側に向かって建てていくのが基本です。
そのため、シャフト鉄骨は外塔鉄骨よりも先に建てていました。
エレベーターは地上450mの第2展望台までなので、シャフトは第2展望台の屋根の辺りが最上部。9月13日にシャフト鉄骨の建て方が完了し、一つの節目を迎えました。
東京スカイツリーに程近い牛嶋神社(墨田区向島)から。
9月17日(金)〜19日(日)には祭礼が催され、周辺は神輿などで賑わいを見せていました。
高さ470メートル(2010年9月18日現在)
8月28日(土)に、墨田区役所の「すみだリバーサイドホール イベントホール」で、新タワー建設推進協議会サマーイベント「東京スカイツリーがある街すみだ」が開催されました。
夏の日差しが照りつける暑さだったにも関わらず、イベントホールにはなんと400人を超える観衆が訪れ、「満員御礼」の盛況ぶりでした。この日は隅田川の向こう側で「浅草サンバカーニバル」が開催されていたこともあって、東京スカイツリーの周辺は熱気に包まれた一日となりました。
トークショーでは、墨田区の新タワー調整課の方などが司会を務め、墨田区観光協会や東武タワースカイツリー、大林組などのパネリストが絶妙なトークを披露。サプライズで「おしなりくん」(東京スカイツリーの地元、墨田区押上・業平橋地区5商店会のキャラクター)が登場したこともあって、会場は大いに盛り上がりました。
来場者参加型のクイズ大会では、東京スカイツリーに関する難問に会場の皆さんが次々と正解。そのスピードと知識には、大林組の関係者もビックリでした。それだけ地元の皆さんが寄せる関心も高いということなんですね。
イベントホール前の常設ブースには、東京スカイツリーに関する質問に関係者が答えるコーナーが設けられて、お子さんから大人まで多くの方が訪れてくださいました。
東京スカイツリーの地元・墨田区が地域活性化をめざして主催した今回のイベントでは、地元の皆さんが東京スカイツリーに寄せる期待の大きさをひしひしと感じました。たくさんの笑顔があふれる、本当に良いイベントだったと思います。
大林組もタワー建設を通じて少しでもこの街に貢献していきたいなあと、改めて感じた一日でした。
街なかで見かける建築中の建物には、外側にネットがかけられていることって多いですよね。
今回は、その「安全ネット」についてお話しましょう。
作業足場の周辺に張る安全ネットは、大きく次の2つに分かれます。
・主に作業場所の物を外に飛散させないための「垂直ネット」
・作業員の墜落や物の落下を防ぐためなどの「水平ネット」
用途に応じて最適な強度や難燃性のネットを選んで使用しますが、水平ネットは、垂直ネットよりも強度が高いことが一般的です。用途を考えたら、そうなりますよね。
さて、東京スカイツリーの工事でも、この2種類のネットを使って安全に作業を進めているわけですが、同じ「垂直ネット」でも、高層部と低層部で色が違っていることにお気付きでしょうか?
高層部で進む工事の最前線では、ブルーのネットで養生しています。
ちなみに、すでに足場を外した場所では、外塔鉄骨の内側にネットを張り替えて作業中です。
一方、低層部はシルバーのネットとなっています。
メーカーにもよりますが、強度や難燃性などの性能によってネットを色分けすることが多く、東京スカイツリーの建設では、水平ネット=ブルー、垂直ネット=シルバーの製品を採用しています。
…ということは、東京スカイツリーの高層部では、垂直ネットなのにブルー、つまり本来なら水平用の青いネットを使っていることになります。
これは、高所での強風による風荷重が大きく、強度の低い垂直ネットでは耐えられないからなんですね。安全面を重視して、強度が最大の水平ネットを、垂直ネットとして使っているというわけです。
東京スカイツリーの「スカイ」のイメージで青色にしているのではなかったのです
こんなところにも、未知の高さに挑む工事ならではの安全対策が隠されていました。
皆さんも、ぜひ東京スカイツリーならではの特徴を探してみてくださいね。
それでは、今日もご安全に!
山のごとく湧き立つ雲の向こうには、どのような眺望が待っているのでしょうか。
燃えるような今年の夏を刻んだ1枚を、フォトギャラリーに追加しました。
(ただいま461メートル:2010年9月11日現在)
東京スカイツリーの285m付近で、どこからか「ミーンミーン」とセミの鳴き声が…
この高さになると地上の音はほとんど聞こえないので、ひと夏の思い出とばかりに鳴く声だけが響きわたっていました。
ところで、セミはどうやってここまで登ってきたのでしょうか?
あのバタバタとした飛び方で? それとも、タワークレーンで吊った部材にしがみついて?
いろいろと考えてみたものの、こればかりはセミに聞いてみないとわかりませんね。
セミは幼虫として地中で長いこと過ごし、7年目に地上に出てきて羽化するとか。
久しぶりに地上に出てみたら「こんなに高い木があってビックリ」といった感じでしょうか…
セミはこの285m付近にいたはずなんですが… 姿はとうとう見つからず。残念!
…と思っていたら数日後、なんと400m付近で目撃情報が。 がんばれセミちゃん!
東京スカイツリー内部にある直径10mの空洞では、完成したら最上部となるアンテナ用「ゲイン塔」の組み立てが着々と進んでいることをご存じでしょうか。
ゲイン塔の建設は、地上レベルで全長を組み立てた後、600m以上引き上げて最上部に設置する「リフトアップ工法」で行われます。
なぜリフトアップ工法を採用したのかについては、「未知の高さを解決する切り札:ゲイン塔のリフトアップ工法」で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
そして、地上レベルでの組み立ては、先端部から造り始め、できた部分をワイヤーで引上げながら、その下に鉄骨を継ぎ足していくという「だるま落し」と逆の要領で進めています。
この組み立て手順は、「流れ作業でさながらミニ工場:空洞部でのゲイン塔鉄骨組み立て」で詳しく説明していますので、こちらもご覧になってみてください。
というわけで、皆さんが見上げているタワーの内部には、実はすでに長さ100mを超えるゲイン塔ができあがっています。タワーの中にもう1本タワーがあるって感じです。
ゲイン塔の組み立てにおけるポイントは、鉄骨の搬入エリアから空洞内までが、工場の製造ラインのようになっていることです。東京スカイツリー内の、さながら「ミニ工場」ともいえます。
この写真は、上図4番の辺りから7番の方向を撮ったものです。台車のレールの先にあるのがタワー内の空洞で、上のほうにゲイン塔の最下部が少し見えています。お分かりになるでしょうか。
こちらは、流れ作業の「塗装」の様子。上図でいうと11番ですね。ゲイン塔内に仮設足場の床を設けて、地上50m付近で塗装を進めているところです。
ちなみに、鉄骨の現場溶接部は工場で塗装を仕上げておくことができません。赤く見える部分は、現場で溶接が終わった部分に下塗りをしたところです。5層のコーティングによって仕上げていきます。
このように、タワーの塔体が伸びていく一方で、ゲイン塔工事も空洞内で並行して進んでいます。
リフトアップ工法によって、高さ500mを超える高所作業も少なくなりますし、未知の高さでの気象条件に左右されずに溶接や塗装ができます。大林組にとっては、設計された建物を「いかにして造るか」ということが腕の見せどころなんですね。
なお、ゲイン塔は今年末には495m付近から頭を出し始める予定です。これからも、ブログで「施工の知恵」をいろいろと紹介していきたいと思います。